
たわいのないやり取りをSNSで1年半続けた時、偶然彼の会社の同僚が、私の会社の主催するコンテストで入賞し、記念品として貰える卓上カレンダーが、余分に手に入らないか、と打診された。私は気安く請負って、そのカレンダーは手元に届いたものの、どうやって渡して良いか考えあぐねた。
私は北米、彼はヨーロッパ。
カレンダーが手元に来てから、二カ月経ち、彼の日本出張最終日と、私の日本出張初日が重なる日、成田空港で、手渡す事になった。
私のフライトが遅れたり、彼の仕事の予定がずれれば、たちまちおじゃんになる綱渡りの約束。
SNSで繋がっただけで満足していた私はこの成り行きに恐れ慄いていた。
その日のフライトでは、緊張して一睡も出来ず、それなのに全く疲れを感じない高揚した状態になっていた。
入国審査を済ませ、出発階にいると言う彼を探して4階に上がる。
携帯で電話しながら探していると、20年以上ぶりの彼が、カートを押しながらやって来た。
心臓が口から出るほど脈打ち、近づいて来る彼がスローモーションに見えたとき、目の前に立った彼は少しかがんで私をハグした。
こう言う時、何て言うものなの?
結局、ありきたりな、挨拶と雑談をしながら、お寿司屋さんへ。
記憶の中にいる彼は、白いシャツとジーンズの似合う、スリムで足の長い青年だった。
その彼が、今は働き盛り、責任ある地位に就いた人らしく、仕立ての良いスーツを着て、でもスリムな体型は変わらず、さりげなく私をエスコートしている。
ああ、そうだった。
若い時から彼はレディファーストの身についている珍しい青年だった。
そこも同年代の男の子達とは違った。
小さな彼の行動が、昔の記憶を呼び起こし、何十年ぶりの再会なのに驚くほど速く親しい気持ちが戻ってくるのを感じていた。
なつみさん
こんにちは。なつみさんの書かれる記事はとても臨場感があって、読んでいてワクワクします。小説を読んでいるようで、ドラマチックですね。空港って非日常的な場所ですので、そこで再会されたのではなおさらお相手の方が素敵に見えたでしょうね。
なつみさんたちが見ている姿は毎回、本人同士のみの姿なので、おそらくは互いに、光り輝く永遠の恋人の姿なのでしょうね。
私たちは本人同士のみがほとんどなかったので、おそらくは相手が思い浮かべる私の姿は子供の手を引く母としての姿。相手は奥様と仕事をなさっているので、夫としての姿です。
仕事をしている姿は素敵ですが、奥様と話す姿はごくありふれた夫婦の姿で、普通の人です。(そう言ってしまうと身も蓋もありませんね)
昨年、若い頃に婚約寸前までいって別れた人をFBで探しあてて長い時間、チャットで話し、会おうか、と誘われましたけれど心が動かなかったのでお断りしました。その後、あっさりブロックされましたので仮に会ったとしてもなつみさんたちのような劇的な再会にはならなかったでしょうね。
でもね、あの懐かしさはよくわかります。20数年ぶりに話しましたが、心の中は昔とちっとも変わっていなくて、まるで少年のようでしたよ。きっとお互いに今でも好意があったら付き合いを再会してしまうくらいの誘惑があるのは理解ができます。幸い、夫が珍しいくらいにメンタル面が強い人なので、どちらがいいと言われると夫を取ってしまうのです。相手と比べても、夫としてなら、主人を選ぶと思います。相手は夫にはない優しさに惹かれているだけのような気がします。
はなさん
コメントありがとうございました。またまた返信が遅くなり申し訳ありません。
その空港での再会からすでに3年以上経って、その三年の間にはお互いの醜い所もさらけ出し、喧嘩や冷戦も経たので、光り輝く、というのは少し違うかもしれませんが(笑)確かに、生活をしていく上でのくたびれ感を感じるほど一緒にすごしてはいないのが利点なのかもしれません。
彼は私にはお母さんとしては頑張ってほしいと願っているので、仕事・母・彼・たまに奥さん業、のような感じです。子供は大事にしなさいよ、と常に言われます。彼のお子さんたちはもう成人していて、でもやはり万全ではなかったとの彼自身の思いが私へのアドバイスに反映していると思っています。
長い間時間を経て再会したのは(もちろん)彼がはじめてですし、別れてからも忘れられなかったのも彼ひとりです。他の元彼たちと何が違ったのか、自分でもわかりかねています。強く引き寄せられる何か、見えないものですが。
はなさんの婚約直前まで行かれた彼、会えないからとブロックまでされたのは残念でしたね。逆に何か思惑があったのだろうか、と思ってしまうエンディングです。
人は変わっていくものなので、20数年前の彼と、今の彼はやはり全然変わってしまったところ、逆に驚くほど変わっていない所、3年経ってやっと見えてきたような気がします。